キム・ギドク監督作品『STOP』プロデューサー、合アレンさんインタビュー!!

投稿日:2017年07月13日

キム・ギドク監督作品「STOP」の関西上映を記念しまして、本作品プロデューサー・女優の合アレンさんに記事を寄稿いただきました

キム・ギドク監督作品『STOP』

大阪・十三 藝術第七劇場にて上映 2017/07/22(土)~08/11(金)
※8/5のみ淀川花火大会の為休館
「嘆きのピエタ」などで知られる韓国の鬼才キム・ギドクが、東日本大震災に伴う福島第一原発の事故を背景に、若き日本人夫婦の葛藤を描いた社会派ドラマ。キム・ギドク自らが来日して監督・撮影・照明・録音の全てをひとりで担当して完成させ、その衝撃的な内容が世界各地の映画祭で物議を醸した。
2011年3月11日、東日本大震災が発生し、福島第一原発がメルトダウンを起こした。原発から5キロ圏内に住んでいた若い夫婦は東京に移住するが、妊娠中の妻は放射能が赤ん坊に与える影響に怯え、正気を保てなくなっていく。ある日、彼女の前に謎の役人が現われ、強引に中絶を迫る。
写真家の夫は妻を安心させるため、かつてと変わらぬ美しい自然や動物たちを撮影しようと福島へ戻るが、そこで驚くべき光景を目の当たりにする。
台湾でも活躍する俳優・中江翼と「3泊4日、5時の鐘」の堀夏子が主人公夫婦を演じる。

【キャスト】
中江翼 / 堀夏子 / 武田裕光 / 田代大悟 / 藤野大輝 / 合アレン / 菅野圭 / 諸星敦 / 中野貴生 / 三ノ輪健太郎 / 猪股俊明 / 石松太一 / 林雄大 / 島田一斗 / 香具青汰 / 加藤蒼渉 / 宇野正剛

【制作スタッフ】
監督・脚本・撮影・編集:キム・ギドク / プロデューサー:キム・ギドク  合アレン 

映画館・上映の詳細

プロデューサー・女優 合アレンさんインタビュー

合アレン (プロデューサー・女優)
日本の映画俳優、そして巨匠キムギドク監督のキムギドクフィルム日本人初プロデューサー。2013年それまで全く縁のなかった映画界に参入、芸能活動を開始、2014年にキムギドク監督作品「STOP」に奇形児を生む母親役で出演、本作のプロデュース、配給も手掛ける。
日本の原発事故をテーマにし公開不可能と言われたSTOPの公開を成功させ、その異様なまでの演技力で観客を惹きつけ俳優としてのキャリアも築き上げる。
その特異な経歴は今映画界に急速に広まりつつある。どんな役もストイックに役作りに打ち込むその姿は獣のようでもある。
英語、アクションも得意とし今後、日本のみならず新しい風を吹き込む俳優として期待される。

STOPの製作に至るまで

キムギドク監督は福島原発事故直後から脚本を書き始め、外国人の自分がこういうものを世に出してよいのか悩んだ末に3年後に製作をきめた作品です。
どこの会社も福島原発事故のテーマについて非常に慎重で、日本での支援は受けられない状況がありました。
しかし、監督は本当に自分の事のように“韓国にも原発はある、日本だけの問題じゃない。世界の問題のはずだ”とこの事故について考え被害の様子を見て心を痛めていました。
そして一人で撮影をすることを決め、このプロジェクトは極秘に進められました。私は巨匠と呼ばれる監督がたった一人でリュックに機材を背負って日本へ来る姿を見て、何かとてつもない迫力を感じました。そして俳優陣も撮影のほんの数日前に決まり、監督のたった一人の闘いが始まりました。

撮影

撮影は約10日間で、監督、撮影、録音、照明全てをキムギドク監督一人で行いました。
安藤大佑氏が通訳や他作業を担当してくださり、私は裏で衣装、小道具の準備をしたり俳優の調整、運転、その他全てやらなければいけない事を手伝い、一日の撮影後は脚本を見直して次の日の打ち合わせと監督のデータチェックを夜通しで手伝い、自分の出演するシーンもあったので役の感情と切り替えられず苦労したりすることもありました。
撮影期間中監督はほとんど寝る時間がありませんでしたが、その気力には圧倒されました。
私の友人の韓国からの留学生が通訳として手伝ってくださったり、俳優達が自分の衣装や小道具などを用意したり、本当に限られた状況の中でその場でアイディアを出し合った手作りの映画です。
映画製作経験の無い私が一人でどんなに走り回っても色んな事が足りなくて、それでも監督はひたすら“無いならアイディアを出せばよい”とばかりに自らその場で色んなものを創作してくださいました。

俳優として

私が演じさせて頂いたのは映画の重要なテーマのひとつである奇形児を生む母親役でした。
事故で家族をすべて失い精神をおかしくし廃屋に住む臨月の妊婦ですが、私は彼女がおかしくなっていたとは実は思っていないんです。ただひたすらに自分の子は大丈夫と信じたい恐怖と闘っていただけなのだと思います。彼女の役名には名前が無く、“女”です。
原発に対する人々の怒りや不安、人に言えずに胎児してしまった方、声なき嘆きの声を象徴した役でした。
私は演技を始めたばかりでこの役を頂いた時には正直とても自分にはできないと思いました。
まず自分の中の彼女を見つけるために役を頂いた撮影一か月前から髪を洗わないことにしました。撮影中は忙しいのを利用して更に自分で精神を追い込みボロボロになっていく自分の中に生まれる惨めさ、怒りや不安といった感情それをひた隠しにしていました。
そして彼女が最後に選んだ決断への気持ち、それは悲しくも矛盾しながらも、彼女が考えうる最大限の幸せへの懇願でした。

上映を通して感じたこと

本作が完成後各国映画祭上映でも原発というテーマにおいて物議を醸し、賛否両論ははっきりと分かれる状態となりました。
私が印象的だったのはチェルノブイリ事故を経験しているロシアのサハリン国際映画祭での上映でした。
あくまで私個人の感想ですが、観客はこれを過激とは受け取っている印象はなく、奇形児の統計や事故後の状況についての質問が多くあり非常に現実的にこの映画を捉えているように思えました。
また女性の観客や映画祭関係者の話から、サハリンが日本から近いこともあり奇形児の影響を心配している方が多くいることを知りました。
監督は恐ろしい忘却を選んではいけないと言っていますが、まさにこうして人へ不安や怒りを与え続けている重大な事故を忘れず考え続けることはとても大切だと痛感しました。
STOPは監督が一人の人間として自分の感じている恐怖や怒りを剝き出しの感情のままストレートに表現している映画だと思います。ある映画ファンの方が、10人全員を楽しませることのできる映画もいいが、9人に嫌われても1人の人生を変えるほど感動させられる映画を作ることができる人は少ないというような事を言ってくださいました。
その時私は涙を流して感想を言いに来てくださった方達を思い浮かべていました。声なき被害者の声を思い、人の痛みに耳を傾け続けている監督だからこそあえて人々が暗に触れようとせず曖昧となってしまう部分に焦点をあてたのだと私は思います。
正直、私自身平和な日本で暮らしていると本当にあの時の異常な空気が夢だったのではないかと思ってしまいそうになることが多々あります。
しかし事実まだたったの6年しか経っておらず、まだまだ元の生活に戻れない方もたくさんいらっしゃると思うと悲しいことです。
私達の国が起こした史上最悪の事故、それは一体どういうことなのか、賛否両論分かれ人々がこのテーマを映画を通して議題にあげること、考え続けるということが増えていったらそれはとても重要なことなのではないかという気がしています。

最後に

この映画を観てくださった皆様、応援してくださっている皆様、関係者一同心より感謝申し上げます。
収益の一部を福島と、そして行定勲監督から故郷熊本の地震被害にあったところへ寄付させていただく事になっております。
引き続き各地での上映をしていけるよう一生懸命頑張りますので応援頂けたら嬉しいです。

映画『STOP』
大阪・十三 藝術第七劇場にて上映 2017/07/22(土)~08/11(金)
※8/5のみ淀川花火大会の為休館

監督:キム・ギドク
作品分数:82分
前売り:1,300円 【公開初日前日まで販売】
当日鑑賞:一般 ・学生1,500円/シニア 1,100円/高校生 1,000円
映画館・上映の詳細