インティマシーは“振付”ではなく“作品構造の整理” IDC認定インティマシー・コーディネーター(ディレクター)として現場で見えていること
IDC認定、インティマシー・コーディネーター(ディレクター)くわた かおると申します。
演技指導歴20年の後、ニューヨークでの研修を経て、インティマシー・コーディネーター(ディレクター)として、舞台や映像作品で、いわゆる濡れ場、絡みと昔呼ばれていた身体の部位の露出や、キスやハグなどのシーンの振付と動きの整理を行っております。
キスやハグ、昔で言う絡みなどを含んだインティマシー表現を含む作品が、日本の現場でも専門家が必要とされる機会が確実に広がっています。
しかし、依然として「俳優同士で話し合えば大丈夫」「その場の空気で調整できる」、「ちゃんとハラスメント対策は制作がやってる」という誤解は根強く残っています。
私はニューヨークでの実地トレーニングを経て、
世界最大のインティマシー専門団体 IDC(Intimacy Directors & Coordinators)から正式認定を受け、映像作品や舞台のご相談に乗っております。
今回お伝えしたいのは、
インティマシーは決して“パーツの技術”ではなく、作品全体の構造を整える専門領域であるという事実です。
●インティマシー表現が“難しくなる構造”は最初から
恋愛描写や身体的接触を含むシーン、距離が近づくシーンは、
それが登場する瞬間から、制作・俳優・演出家の間に
判断のズレ が生まれやすくなります。
・同意(Consent)の多様性
・触れる部位、それぞれの解釈
・触れ方の強さやスピード、感覚的な差異
・距離の変化(悪意のある関係なく)
・再現性(舞台で公演を繰り返す場合だけでなく、リハーサル含めて0
・カメラや照明、スタッフの位置
・衣装やヘアメイクメとの関係や調整
・安全のライン、それぞれの快適さの範囲
・演技の邪魔にならず、演出の効果を引き出すための工夫…
これらを 誰がどこまで決め、誰が責任を負うのか が曖昧なまま進むと、現場は時間を失い、俳優は不安を抱え、演出意図が揺らぎます。
これは単純な「技術の問題」ではなく、もともとの構造からの問題 です。
その構造を整理するのが、インティマシー・コーディネーター(ディレクター)の役目です。
●私が“現場の温度感”を理解している理由
私自身、小学生の頃から芸能事務所に所属しておりました。また周囲に演出家・ダンサー・俳優が多い環境で育ったこともあり、
先輩や後輩含め、同級生の多くがプロの現場で活躍していました。
・演劇作品の演出家
・激作家
・ミュージカル演出家
・オペラ演出家
・アクション監督
・映画監督
・映像俳優
事あるごとに彼らのお話を伺い、また稽古場に入り、制作プロセスを近くで見てきた経験が、俳優の迷いや、演出家の意図、制作側のプレッシャーを理解する土台 になっています。
だからこそ、
「どの瞬間で現場が止まりやすいか」
「演出家が伝えづらいポイントはどこか」
「俳優が言語化しにくい不安はどこから来るか」
を自然に読み取ることができます。
●インティマシーはたんなる“安全の仕事”ではなく、“演出
とうごきの整理”の仕事
国際基準で学んだ最も重要な点は、
インティマシー・コーディネーション(ディレクション)は「演出を邪魔しない」仕事ではなく、むしろ「演出を鮮明に立ち上げるための整理」だということでした。
では具体的に何を整理しているのか。
・触れる順番と文脈
・距離の精度と人間関係
・呼吸の変化とその効果
・身体の緊張と弛緩による、生み出される効果や連想
・視線の位置と演技のプラスになる動き
・心理的な安全ライン
・台本の構造や役の関係性
・演出意図の翻訳と個別のサポート
・再現性の担保と安全の確認
・変更への耐性
これらを一つずつ丁寧に整えることで、俳優は迷わず演技に没頭でき、
演出家は細部に集中でき、制作は判断の板挟みから解放されます。
また、疑心暗鬼にならないので、スタッフも、自分の持ち場に集中することができます。
●オンライン研修だけでは到達できない“身体の判断領域”
私がニューヨークの実地研修で痛感したことは、身体を扱う以上、オンラインでは決して学べない領域がある ということです。
・俳優の緊張の波は、その立場になった経験が必要だと感じまし
・呼吸の乱れも、自分だけでなく周囲も巻き込みます
・視線の揺れから、不安心配やつながる人もいます
・手のテンションが、相手の不快や誤解につながることも…
・距離のズレが、繰り返しのリハーサルやあらぬ心配につながることも…
特に、
・相手役の反応の変化が正確に把握できるのは、気を遣って過剰に反応している時ではなく、信頼しているときだということ…
これらは、どうしても画面越しでは見えません。
私がニューヨークで受けたIDCの研修では、多国籍の俳優・演出家とともに、“その場で動き、調整し、修正し続ける” プロセスが中心です。
知識ではなく、判断力 が鍛えられます。
これが現場で最も必要とされる力です。
●「第三者性」があるからこそ、現場の力関係が整う
インティマシーの現場で最も問題になりやすいのは、
俳優・演出家・制作の力関係が歪む瞬間 です。極端な例ですが、
俳優は言いにくい。
演出家は頼みにくい。
制作は判断を押し付けられがち。
これでは、誰も演技や演出に集中できません。
インティマシー・コーディネーター(ディレクター)は
俳優でも演出でも制作でもない “第三者” だからこそ、
力関係のズレを整理し、あらぬ誤解や我慢せずに演技と制作に集中できる環境を作れます。
●再現性や調整力のない演技は、世界観の成立がむずかしい
キスや絡みなどを含むインティマシーに関連したは、その場の感情だけでは成立しません。いくら本人が自信がある、問題がないと言ったとしても、お相手が言い出しづらいと言うことも。
作品の完成度を保つためには、再現性の高い振付(コレオグラフィー) が必要です。
再現性がないと、
・テイクのたびに印象が変わってしまう
・距離が揺れる、スタッフも大変に…
・俳優の負担が大きくなる、繰り返すことで、時間も体力も奪われる…
・カメラが合わせられなくなる
・演出意図が曖昧になる
演技は、感情と技術と構造のバランスで成立しています。
だからこそ、
“安全 × 表現 × 再現性” の三点セットが揃うことが絶対条件 です。
●制作・演出・俳優が本来の役割に戻れる環境を作る
対面でのトレーニングを受けた、プロのインティマシーの専門家が入ることで、現場の渋滞が一気に解消されます。
制作は判断のストレスから解放され、俳優は迷わず演技に入れ、
演出家は作品の細部に集中できます。
これは、単に“安全対策”ではありません。
クリエイションの質を守るための基盤作り です。
●どの段階でも相談できます
もちろん、早めにご相談いただいた方が、カスタマイズされたご提案が可能ですが、一方で、例えば、
脚本段階
プリプロ
稽古初期
撮影日
変更が起きやすい当日進行
からのご相談も場合によっては、可能です。
また、近年多い、卒業制作もプロと同じもしくはそれ以上のサポートが必要だと感じます。舞台でも、学生公演だからといってスタッフを入れないのではなく、アクションやダンスのシーンと同じように、捉えていただけると誤解がないと思います。
●私はどのフェーズからでも、サポート可能です。
ご相談はメッセージからお受けしています。
作品の世界観、演出意図、俳優の安心感を守るためのお手伝いをいたします。
ぜひ、この機会に、これまでの当たり前、なんとなくやってきたことを見直してみませんか。
みなさまのお役に立てるよう、願ってます。
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掲載者情報
| 掲載者 | 鍬田かおる |
|---|---|
| 担当者 | 鍬田かおる |
| 住所 | 世田谷区代沢2-28-8 |
| お問い合せ先 | kaoru@intimacydirector.jp |
| 関連URL | https://intimacydirector.jp/ |
| その他情報 | https://www.instagram.com/intimacydirectorkaorukuwata/ https://prtimes.jp/story/detail/rNLGaWCGj9B https://intimacydirector.jp/ |